CASE

Connected KEY PERSON INTERVIEW

コネクティッドは
社会づくりだ。

コネクティッドカンパニー 
ITS・コネクティッド統括部 主査
村田 賢一

2008年入社。前職は大手家電メーカーのソフトウェア開発。BSデジタルテレビの初号機に搭載するソフトウェア、世界的なヒットを記録したゲーム機の開発にも携わる。トヨタに転職した理由は、知り合いから「クルマの電子化・情報化が始まろうとしているが、一緒にトヨタで働かないか?」と誘われて。入社後はコネクティッド技術の先駆者としてさまざまな活動を展開。

コネクテ「ィ」ッド。

世界中の自動車メーカーで注目されているキーワード・「CASE」。「C」はIoT技術でクルマと社会をつなぎ、さらなる安全と安心を提供する「コネクテッド」を指しますが、トヨタでは小さい「ィ」を入れて「コネクティッド」と命名しています。情報処理、通信、データ分析などの技術を活用し、トヨタ独自の「つなぐ」技術をどう確立し、進歩させるか。どんなリアルのサービスをつくり、社会をいかにより良くするか。そして、どのようなモビリティ社会を創造するか。コネクティッドはあくまでその手段です。私が描くモビリティ社会ですが、現段階のイメージでは、モビリティは社会の重要な一部分。ジャストインタイムで人とモノを移動させることができたら、水や電気に並ぶインフラになると考えています。これまでトヨタは、インターネットでクルマと外の世界をつなぐことに力を入れてきました。しかしこれから追求すべきは、クルマと社会のどれと何をつなぐか。そこで得たデータにどのようなバリューを付与するか。もちろん、これがゴールではありません。モビリティ社会は進化し続けるものですから。

未知の楽しさを生み、
尊い命を守るIoT。

コネクティッドの技術を通じて、どのようなモビリティ社会を創造するか。挑戦はまだ始まったばかりです。今、私たちが大切にしているスタンスは「こんなサービスがあると、社会はより良くなる」というイメージとテクノロジーを掛け合わせ、最適なポイントを抽出すること。そのポイントが新しいサービスになりますから。たとえば「T-Connect」の「ハイブリッド音声認識」。運転中のドライバーが「周辺にある評判のいいイタリアンを教えてほしい」「室温を上げて」などのオーダーをクルマに出すと、その内容に応じてサービスセンターで対応するか、車内に搭載したAIで処理するかを自動的に決めて応対します。運転中に出るさまざまな要望に迅速かつ的確に対応できたら、ドライブはより快適で楽しくなる。しかし、すべてのオーダーをサービスセンターで対応するのでは限界がある。クルマで応対ができたほうがいいケースも多いのでは。ならば、どのような技術が必要なのか。イメージとテクノロジーがベストな形で融合する点を探して実現したのが、現在のハイブリッド音声認識です。

まずは、社会を発展させるサービスをイメージする。
次に、既存の技術、新しいテクノロジーによる実現方法を検討する。
イメージと技術のクロスポイントが、新たなモビリティサービスとなるのだ。

しかし、ハイブリッド音声認識にしても、「T-Connect」にまつわる他のサービスにしても、完成形はありません。スマホのアプリも、バージョンアップするごとに機能が増え、より便利になりますよね?これからのクルマも同じです。初めて世に出たとき、その時点での最高であるのは当然。発売後も、ソフトのバージョンアップを繰り返して、最高を塗り替えることが重要です。さらなる気持ちよさや楽しさを産み、より多くの命を守るためにも。前職で家電に携わってきた私が車と向き合うようになって強く感じたのは、命にかかわるモノづくりの大切さです。たとえば、突然の疾病に掛かった人をいかに最短の時間で、かつ安全・安心に病院まで届けるか。こちらも「T-Connect」の例になりますが、事故が起きてエアバッグが作動したとき、「作動した」というデータをクルマからサービスセンターに発信し、救急車をはじめとした緊急車両を早急に手配して現場まで到達させる機能があります。同時に衝突したときのスピード、ドライバーに掛かった重力、車両が倒れている方向や損壊の度合いなどのデータも発信することで、救急車を出動させるべきか、ドクターヘリで向かうべきか、瞬時に判断することが可能になっています。でもこれは現段階の最高であり、さらなるバージョンアップができるはずです。あなたも「ドライバーの命を少しでも多く救うために、こんなことができたらいいよね」と想像したら、いろいろ頭に浮かんできませんか?それこそが挑むべきテーマであり、その手段のひとつがコネクティッド。皆さんはエンジニアであると同時に、モビリティ社会の創造者でもあるのです。

協力者は、社内外に。

ひとつのサービスをつくるのは決して容易ではありません。チャレンジの連続です。私たちコネクティッドカンパニーは、いつでもどこでも多くの仲間から力を借りることができるよう、先進技術開発カンパニーやエンジン開発を担当するパワートレーンカンパニーなどともつながっています。関係もフラットで、どんなときもスムーズに連携することが可能です。エンジンのデータをどのように活用するか。「CASE」の「A」を指す自動運転を実現するために、どう手を取り合ってプロジェクトを進めるか。日々、さまざまなテーマについて数多くの部署が協業しています。カンパニー内に目を向けると、共存しているのはサーバと車載、双方の専門部署。アイデアを出したとき、すぐ技術面で実現の可否を検討できる体制は大きな強みです。また、部署間だけでなく、人と人とのつながりが強いのもトヨタならでは。ここまで大きな会社でありながら、仲間がすぐに集まり、話し合い、助け合う風土が隅々まで浸透しているのはかけがえのない魅力です。ひとつのプロジェクトを立ち上げて進めるときも、プライバシー関連は法務部門のスタッフが、各国の法律制定にまつわる内容は渉外部門が、というふうに、さまざまな分野のスペシャリストがサポートしてくれます。

さらに、社内だけでなく、自分が持つ社外のネットワークも活用して開発の体制を構築できることも特徴のひとつです。私の例で挙げるとしたら、2018年にエッジコンピューティングの自動車ユースケースでの可能性を追求するために「AECC(オートモーティブ・エッジ・コンピューティング・コンソーシアム)」という団体を設立しました。加盟しているのはIT業界の名だたる企業です。私の構想を提案したら、各社におけるCTOクラスの方々が「それはすごい!」「おもしろい!」と賛同してくれました。皆さんもぜひ、これまで培ってきたネットワークを活用したり、協業したい人がいたら声を掛けたりして体制を築き、新しいサービスの創造に向けて邁進してください。

挑んだ末の
失敗であれば。

もうひとつ、伝えておきたいことがあります。前述したとおり、コネクティッド技術の開発とその先にあるモビリティ社会の創造は、常にチャレンジの連続です。「T-Connect」をはじめとした現在のサービスも、日の目を見なかった数限りない挑戦の上に成り立っています。トヨタはひとつのチャレンジが実を結ばなかったり、ときには失敗とみなされたりしても、チャンスを剥奪される会社ではありません。これも私の経験談ですが、過去に、自分が開発主査をしていた新車に搭載するナビゲーションシステムに大きな開発の遅れが起こり、工場の稼働を数日間止めてしまったことがありました。会社にとってはこの上ない損失です。「クルマのIT化が重要になる」と社内に訴え続けて実現したプロジェクトだったので「自分の想いに耳を傾けてくれる人はもういないのでは」と不安にもなりました。しかし会社は「一度失敗したのだから、十分振り返って2回目はないように頑張ってほしい」と、引き続きチャンスを与えてくれたのです。それが結果として副社長直下の部門である「BRコネクティッド戦略企画室」の創設につながり、やがては現在のコネクティッドカンパニー設立に至ります。重要なのは、折れないこと、諦めないこと。意外にシンプルなものです。

長々と話してきましたが、最後にお伝えしたいのは「前例のないことに挑みたいITエンジニアにとって、トヨタのコネクティッドカンパニーは絶好の環境である」ということです。私自身、エンジニアとして時代のハイライトとなる製品を数多く開発してきました。世の中にも大きな影響をもたらしてきたと自負しています。しかし、モビリティ社会の創造は、これまでのどんな挑戦よりもおもしろくて刺激的です。世界中のどこを探しても、トヨタにしかできないことですから。全てが結実したときは社会の在り方を大きく変えることは間違いありません。理屈抜きで「おもしろそうだ」「歴史をつくりたい」と思ったら、ぜひ飛び込んできてください。

コネクティッド部門とは

100年に1度と言われる自動車業界の大変革期をチャンスと捉え、クルマの枠を超えた真のモビリティカンパニーへの変革を目指しています。クルマとヒトとコミュニティを相互につなげ、全ての人に安全・安心な移動の自由と歓びを提供するような未来のスマートモビリティ社会を創出したい。そんなチャレンジ精神にあふれた方を、コネクティッドではお待ちしております。

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