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自動車×宇宙機の技術融合で

新しい価値創出を

クルマ開発

先進プロダクト開発部

H.H

先進プロダクト開発部で有人与圧ローバの電気・電子システム開発に携わるH.H。社内の各システム部署と連携しながら、車両全体の電気・電子構造を全体最適化する活動を牽引しています。電子制御関係のシステム開発で培ったスキルを武器に未知の技術領域に挑むH.H。仕事の醍醐味、大切にしている価値観を語ります。

有人与圧ローバの

電気・電子システムの

設計開発を牽引

先進技術開発カンパニー 先進プロダクト開発部の循環型モビリティ開発室に所属し、2023年2月現在は有人与圧ローバの開発、とくに電気・電子システムの設計開発に携わっています。

NASA(アメリカ航空宇宙局)が提案する月面探査プログラム「アルテミス計画」の一環として、2020年度からプロジェクトに参加。 JAXA(宇宙航空研究開発機構)と連携して有人与圧ローバの全体管制機能について先行段階の研究を進めています。

有人与圧ローバは、遠く離れた月の上で宇宙飛行士を乗せて走行する探査車です。圧力容器の中に居住するため、宇宙服なしで探査走行することができます。この車両全体の電気・電子システムの成立に向けて、各システム設計を把握し、全体最適化する活動を牽引するのが私の役割。主任という立場で、車両全体を俯瞰する管制コンピュータの開発、各システムに対してエネルギーを供給するための電源構造の設計、各システムに対して制御信号を伝達するための通信構造の設計を推進しています。また、設計案の実現に必要な部品を試作・製造いただくために、各部品メーカ様との連携も進めているところです。

少し具体的な業務フローについて紹介します。①車両コンセプトの検討、②ローバミッション詳細の理解と必要機能の抽出、③機能実現にむけた制御構築、④制御実現のためのハードウェア(コンピュータ)検討、⑤システムの安全検証、⑥ものづくりに向けた部品メーカ様との仕様相談、⑦開発品の評価という流れです。

③の制御構築工程では、どのような制御配分を行うと良いかを導き出し、④のハードウェア検討工程では計算量の制約や、故障時の影響を考慮して何台のコンピュータに機能を分配するかの検討を行います。⑤の安全検証ではFTA(Fault Tree Analysis)やFMEA(Failure Mode and Effect Analysis)などの検証を通して、システムの安全性を確認します。このようにコンセプト検討から、開発品評価まで、一連の工程に取り組んでいます。

この電気電子開発に関わるのは、制御電子開発グループのメンバーと、同じ循環型モビリティ開発室内の各機能担当グループ。共に、2029年の月探査を目指して開発を進めています。

仕事をする上では、まだ見ぬ製品を市場に提供することで社会を豊かにし、たくさんの人に幸せになってほしいという想いを大切にしています。新価値を提供するためには、同じ場所にとどまり、同じ設計を繰り返していては達成できず、常に新しい技術開発にチャレンジしなければなりません。その一つの開発フィールドとして今回は宇宙を選択し、有人与圧ローバという新型車の開発に乗り出しました。

困難な道と知り、

自らゼロベースで

宇宙機の開発に携わる道へ

2015年度に入社してまず配属されたのは、制御電子システム開発部でした。ステアリング関係の開発として、「走る」「曲がる」「止まる」のうちの「曲がる」の機能を担当しました。そこでは2年間、3輪電動モビリティの運動制御系システム開発を、続く2年間でステアバイワイヤシステム開発を担当しました。

その後、2019年に先進電子開発室に異動し、ステアバイワイヤ開発を継続しつつ、物流モビリティの自動運転化など、自動車以外の先行技術開発にも取り組む中で、技術の幅を広げてきました。

2020年度に入り、担当プロジェクトの設計がまとまってきたタイミングでグループ長から次の仕事を打診され、いくつかオプションを提案してもらった中から、有人与圧ローバの開発を選びました。理由は、ゼロベースで宇宙機の開発に携われる機会はそうないだろうと思ったこと。困難な道とわかっていましたが、またとない経験が積めると考えて決断しました。また、宇宙機と自動車とでは活動の場こそ違いますが、故障が発生しても安全に機能を継続するためのバックアップの思想など、これまでの経験を活かしたいと考えたのも理由の一つでした。

2022年には現組織である先進プロダクト開発部に有人与圧ローバ開発メンバーの一部が集まり、具体的な設計検討が加速しています。車両形状を設計する構造体チーム、生存に適した温度環境を設計する熱チーム、クレーターや岩石が散らばる月面上を走破する機器を設計する走行チーム、安全安心を確保する品質信頼チームなど、多くの開発グループがあり、連携しながら有人与圧ローバの開発に取り組んでいます。日々新しい発見があり、ほかのエンジニアとの開発の中で自分を磨けるこの環境は、私にとってはすばらしいものだと感じています。

宇宙機の設計開発は

苦労の連続。

培ったものを多くの人に

届けたいとの想いが励みに

現在のプロジェクトにおける私のミッションは、有人与圧ローバの車両全体の電気・電子構造を組み上げていくこと。そのためには、各システムの設計を把握することが不可欠ですが、社内での宇宙機の設計開発は前例がありません。そのためどの部署も設計は手探り。なかなか形が定まらず流動的なものを全体最適に組み上げなければならないところに難しさがありました。

また、JAXAとの打ち合わせを実施してコミュニケーションを重ねながら仕様を固めていくのですが、お客様と各開発部署の意向が噛み合わない場面も時にありました。あちら立てればこちらが立たぬという具合で、全体最適化を図りながらお客様ニーズを製品に落とし込んでいくのも簡単な道ではありませんでした。

というのも、普段われわれは自動車業界としての考え、クルマづくりの中の常識で設計に取り組み、サプライヤー様と連携しながら複数の車種を世界中のお客様に向けて量産しています。しかし今回は宇宙の常識を前提に、JAXAの「こういうローバがほしい」という要望を伺い、少量で製造していくという進め方であり、新しい開発スタイルとなります。安全・安心・品質を第一に考えながら、JAXAの要望に対応する一方、開発規模も考慮して事業として成立させねばなりません。もちろん、人材育成も重要です。そうやってさまざまなことを考慮しながら、開発を推進することは苦労も多くあります。

苦労が多い反面、学ぶことも多くありました。たとえば、月と地球の約38万kmをつなぐ通信技術など自動車には存在しない技術を異業種の会社から習得し、既存のクルマ技術と融合して、一つの製品に仕上げていく過程が学べるのは貴重な経験だと感じています。

私自身、もともとそこまで強く宇宙に興味がありませんでしたが、取り組んでいるうちにおもしろさに魅了されるようになってきました。もちろん、月は物理的には遠い存在ですが、知れば知るほど身近に感じられるようになってきました。重力が小さい上、寒暖差が激しく空気もありませんが、そうした地球との違いを正しく理解し、その違いを克服するための環境対応さえできれば、技術者のやるべき仕事としては、想像していたほど困難なものではないとすら思えるようになってきました。

宇宙機の開発に関わることは、トヨタにとって新しい技術を獲得する絶好の機会。今取り組んでいることが、次世代のクルマ・モビリティ開発に還元できる可能性も大いに感じています。たとえば、月という極限の環境に対応するためには、限られたエネルギーをいかに効率的に使うかという技術開発が求められます。そこで培った技術を地上車に還元できれば燃費をさらに向上することが可能です。また熱・電気・運動制御システムなど、ドメインをまたいで技術を融合させることで、より大きな規模で全体最適化を図ることができると思っています。そうやって宇宙機開発で培ったものを、地球上のお客様にもお届けすることを目指して取り組んでいきたいですね。

自分以外の誰かのために

──トヨタパーソンとしての

展望

当面の目標は、共同研究にてJAXAと共に描いてきたコンセプトを形にすること。数年以内に試作車として、実際に動くものをつくるところまでいきたいですね。そしてJAXAには、「よくわれわれの想いを形にしてくれた。トヨタに頼んで良かった」と思っていただけるような、有人与圧ローバを提供することを目指しています。

電気・電子システム全体で言えば、現在数十人の規模で電気・電子アーキテクチャワーキンググループと呼ばれる会議体を運営しています。制御電子だけでなく、熱システムや自動運転・走行系、電源、燃料電池、太陽光システム設計のメンバー、全体ミッション・安全信頼性設計を行うメンバーも集まっていて、今後も全員に知見をもらいながら設計を進めていく予定です。新規開発のため次の一手に迷うこともありますが、トヨタ生産方式の思想も取り入れ、仕事のフローを整流化しながら業務を推進できるよう心掛けています。

各エンジニアがうまく連携していくためには、信頼関係の構築が欠かせません。積極的に垣根を越えて交流を深め、それぞれ互いの部署、技術のことを考えながら自律的に動くのが理想だと感じています。トヨタは分業制による効率的な組織ではありますが、ときに縦割りになりがちなので、横の壁をうまく溶かしながら、他エンジニアと協力して積極的に設計に取り組んでいきたいですね。

最後になりますが、トヨタの創業時から受け継がれている豊田綱領の一つに、「産業報国」という言葉があります。今の私の仕事で言えば、JAXAというお客様に喜んでいただき、社会のために、日本の未来のために、少しでも貢献できればと思っています。

また、「だれかのために」という思想は、トヨタとして重要な考え方を整理した「トヨタウェイ」のひとつです。JAXAや実際に有人与圧ローバに乗り込む宇宙飛行士の方はもちろんのこと、その他にもトヨタのクルマをご愛用くださっている世界中のお客様やわれわれを応援してくださっている株主・地域住民の方々なども含め、皆様に「トヨタという会社があって良かった」と少しでも思ってもらえることを、トヨタパーソンのひとりとして目指しています。

有人与圧ローバの成功に向けて宇宙産業の仲間に学び、550万人の自動車産業の仲間と共にもっといいクルマづくりも見据えて、これからも自分に与えられた仕事に愚直に向き合っていきたいと思います。

クルマ開発とは

未来のクルマを創造するための先端研究や先行開発、そこで生まれた技術を製品に仕立てる製品開発を担当しています。自分たちが新しい未来を想像して描く。常に新しいものを考えて生み出す難しさと魅力がここにはあります。

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