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現地現物で挑む

数理最適化の最前線

未来創生

R-フロンティア部

K.A

モビリティ・カンパニーへの変革を目指すトヨタ自動車において未来研究の分野を担う“未来創生センター”。未来創生センターでは将来のお客様のWell-beingな人生の支援を目指し、ロボティクス、革新インフラ技術、数理データサイエンス、バイオヒューマンという4つの領域に取り組んでいます。K.Aはその未来創生センターで、病院内搬送ロボットの搬送経路や物流センターの物品配置など、現場課題への数理最適化の応用研究に携わっています。本質的なカイゼンを成し遂げるために、大切にしていることとは。

数値や図を見ているだけでは

わからない。

現場を見て初めてつかめる

課題とニーズ

2023年2月現在、私は未来創生センターで、数理最適化技術の応用研究を行っています。数理最適化とは、現実社会のさまざまな課題を数式で表現し、意思決定や解決方法を提案する方法論のこと。中でも、“組合せ最適化”と呼ばれる技術を使って、搬送ロボットの経路最適化や物流センター内の出荷作業最適化など、社内外の現場への適用を実施してきました。

目指しているのは、ひと中心のシステム構築。現場の方がいきいきと活躍できるような仕組みづくりです。病院内を走っているロボットがどのように走行すれば決められた時間に間に合うように搬送できるのか、また物流センターで出荷作業をしている方の歩行距離を短くするためにはどうしたら良いのかなど、効率化や生産性向上、現場における作業負担軽減のために、さまざまな課題に取り組んでいます。

といっても、最初から具体的な要望があるわけではありません。「こういうところで困っているんだけど……」といった具合に漠然とした困りごとをもとに、現場の方との会話を通して問題を顕在化させていきます。そうしたやりとりを交わす中で、たとえば「歩行距離を短くしたい」というニーズがようやく見えてくるわけです。

数理最適化と聞くと、いつもパソコンにかじりついて作業している印象を受けるかもしれません。実際、データ分析、解くべき問題の定式化 、プログラム実装など、デスクワークをする場面も多いのですが、現場で何が起きているかを知らないと、数式で表現することはできません。仕様を決めていく上では、実際に現場に足を運んで自分の目で確かめ、現場の方と定期的にコミュニケーションすることをとても大切にしています。

人間とロボットのより

快適な協業を。

研究成果を応用する場を求め、

トヨタへ

学生時代はインダストリアル・エンジニアリングを専門とし、双腕ロボットによる組立作業の自律的改善(機械学習や数理最適化技術を用いた作業の効率化)を研究していました。とくに関心があったのは、ファクトリーオートメーションや、ひととロボットの協働作業です。

研究室を選ぶ当時、ドイツや日本では“Industry4.0”や“Society5.0”といった、超スマート社会、デジタル革命を目指す考え方が盛んに研究され始めていました。これは、ひととシステムとをインタラクティブにして、より良い社会を目指そうという考え方。その実現に向けた研究をしている研究室だと説明を受けて、「未来の世の中はこうなっていくのか」と思いを馳せた記憶があります。

たとえば工場では、ときにロボットの動きが予測に反したものとなってひととロボットがうまく協調し合えなくなることがあります。「ロボットの作業の仕組みがどうなっていて、それをどう分析すれば人間にとってより一緒に働きやすいものとなるのだろう」と考えたことが、学生時代の研究の出発点。当時と今とでは扱うロボットこそ違いますが、学生時代に考え、取り組んだことが現在の研究につながっています。

アカデミアに残らず企業に就職する道を選んだのは、研究の成果を応用研究へとつなげ、現場で活かしたいと考えたからです。中でもトヨタ自動車に決めた理由は、“TPS(トヨタ生産方式)”など改善について充実した技術やノウハウを蓄積していることに惹かれたから。また、未来創生センターが掲げていた“ひと中心のシステムづくり”という考え方に強く共感したことも入社の決め手になりました。

2017年当時、未来創生センターを実際に見て衝撃を受けたのは、「本当にここは自動車会社なのか」と思うほど多様な研究に取り組んでいること。従来の物理的な移動に限らず、さまざまな移動に関する新しい価値・サービスの提供を目指し、たとえば、空にカイトを飛ばして風力発電するプロジェクト、Well-beingを目指した空間研究など、クルマに直結しない研究も当時から積極的に行われていました。そんな環境であれば、広い視野を持ちながら研究に取り組めそうだと思ったのを覚えています。

多様な現場に触れられた

修行派遣と、

開発と一体で課題解決に

臨んだ病院内での

搬送ロボットプロジェクト

これまでのキャリアの中でとくに記憶に残っているのは、“修行派遣”として株式会社デンソー(以下、デンソー)に出向したときのことです。

修行派遣とは、海外事業体や国内関係先への研修派遣、他本部・他領域へのローテーションなど、職場外へ派遣する制度です。派遣先での研修を通じて、専門性を高めるだけでなく、不慣れな環境下でやりきる度胸や、将来グローバルに活躍できる素養の習得を目指します。

デンソーとはそれ以前にも共同研究をしていた経緯があり、現場課題に対する数理最適化の応用提案を迅速に実施してくださっていました。そうした応用研究の内容が対外的に発表されることは少ないため、豊富な知見をお持ちのデンソーで経験を積むことは、自分にとって貴重な機会になると考え、共同研究先のマネージャーに1年間の出向を相談したところ、快く引き受けてくださいました。

出向して印象的だったのは、デンソーが研究している領域が非常に幅広いこと。国内外の工場や関係会社、共同研究先 、公共交通機関など、数理最適化技術を現実の問題へと応用できる場がたくさんあることにも驚かされました。

派遣中は屋内搬送ロボットの運用や公共交通機関の課題を解決するため、数理最適化の技術を応用した研究に携わりました。とくに前者の案件では交差点での制御や経路設計に関わり、搬送ロボットの作業設計の効率化につなげました。いずれのプロジェクトも現場と密接に関わるもので、派遣前に期待していたような経験をさせていただけたと思っています。

一方、トヨタ記念病院での搬送ロボットプロジェクトも印象に残っています。看護師の皆さんの業務を調べたところ業務時間の約4割が運搬作業だとわかり、その運搬作業をロボットに置き換えることで、看護師のみなさんが患者さんと向きあい、より専門性の高い仕事をするための時間を確保することが狙いでした。

当時、ロボットを走らせる予定の建物は竣工前。どの程度の運搬作業量があり、それをさばくロボットが何台くらい必要なのかを把握するには、デジタルツインでロボットを仮想空間上で走らせて検証する必要がありました。

実際にシミュレーションを行ったところ、想定していた台数では足りないことがわかったものの、台数を増やすと渋滞が起きるジレンマに陥ることも。またエレベーター前など当初想定していなかった場所でロボットが詰まってしまうなど、シミュレーションをして初めて見えてきた課題もありました。それらの課題をロボット開発チームと一緒にアイデアを出し合いながら解決していくのはとても貴重な経験でしたし、やりがいを感じながら取り組むことができました。

現場の役に立つことが

研究の存在意義。

徹底して相手の立場に立った

価値提供を

修行派遣や病院内搬送ロボットのプロジェクトを通じて、現場の方と考えをすり合わせることの重要性をあらためて学ぶことができました。基礎研究では問題をシンプル化し、理想状態を想定して進めることが多いですが、現場では予期せぬ課題が生まれるもの。机上の研究と現場とでは前提条件や制約条件が乖離しているケースがほとんどなので、応用研究では最適化結果を何回も共有し、現場の方から意見をもらいながら、現場に合わせたつくり込みを心がけています。

そのために必要なのが、信頼関係を築けるだけのコミュニケーションを重ね、現場を徹底的に理解すること。現場を自分の目で見て、そこで働いている方の声にしっかりと耳を傾けることが、困りごとの背景にある課題を見つけ出す近道だと考えていますし、現場と一緒にそれを解決していけることが、この仕事の醍醐味だと思っています。

また、相手の立場になって物事を考えることの大切さもあらためて感じています。現場の方に「良くできた」と思っていただかなければ、プロジェクトが成功したとはいえません。自分だけが課題を解決できたと思うのではなく、相手の真意をつかみとれたと確信できるまで会話を重ねるためにも、謙虚な姿勢と感謝の気持ちをこれからも大切にしていきたいですね。

未来創生センターには、企業や大学といった社外のさまざまな技術・研究に触れられる機会があります。またメンバーの専門性も数理データサイエンス、ロボティクスだけでなく、流体、バイオなど顔ぶれも実に多彩です。

未来創生センターの理念に合っていれば、年次に関係なくテーマを提案できるなど、幅広い経験を積むチャンスに恵まれているのも未来創生センターの魅力。個人的には、数理最適化に関する情報収集がしやすい環境が整っていること、とくにデンソーをはじめ、数理最適化に詳しいトヨタグループや研究機関の方と情報交換できることも、当センターならではの強みだと感じています。もちろん、社内外との共同研究によりたくさんの現場があるため、日ごろの研究をすぐに実装し、応用研究に結びつける機会が充実していることも特筆すべき点です。

そんな恵まれた環境の中で、今後も現場の課題を通じ、有用な数理最適化技術を見極めながら基礎研究や応用研究に取り組んでいきたいと思っています。目標は、ひととシステムが協働する最適なシステムをつくること。誰もがいきいきと活動できるような社会の実現を目指し尽力していきたいですね。

未来創生とは

様々な研究領域で、トヨタの目指す次の未来に向けて常にチャレンジを続けています。 「ほとんどの人が想像できていない価値創出・真理探究」で短~長期の企業競争力強化に貢献し、従来の物理的な移動に限らず、様々な移動に関わる新しい価値・サービスを提供する為の研究/開発を行っています。

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